母と祖母と三人で暮らしていた。
一番最初に母が仕事へ、その次に私が学校へと家を出る。
その日、ベランダで洗濯物を干していた祖母に「行ってきます」と言って家を出た。

いつもどおりの学校生活を過ごし、いつもどおり17時頃に帰宅すると、いつも部屋にいるはずの祖母がいなかった。不審に思いながら部屋の奥へ進むと、祖母はベランダにいた。
朝、「行ってきます」と祖母に声をかけ、ベランダの鍵を閉めて出かけてしまったらしかった。祖母は一日中ベランダで過ごしたのである。

なんてことをしてしまったんだと慌ててベランダの鍵を開け、祖母を部屋の中へ入れると祖母は「戸締りの習慣が身に付いとって大したもんたい!」と誉めてくれた。
顔がすごく恐かったので実際には怒っていたのだと思うが、それでも誉めようとしてくれたのが嬉しかった。