懐かしいものに出会うと、ちょっと嬉しくなる。

家からコンビニまで向かう間にある公園。
その公園に生えている一本の木をめがけて、子どもたちが石を投げていた。
どうやら遊んでいたボールが木の枝にひっかかって落ちてこなくなったようだった。
ああ、こういうことあったなあ、と懐かしく、ちょっと嬉しい気持ちになった。

石が当たるたびに歓声が起きたがボールは一向に落ちてこなかった。
一人の少年が、自分の靴を投げると、石が当たるよりも大きな歓声が起こった。
しかしボールには当たらなかった。
そのまま靴が木に引っかかってしまうと、子どもたちの間に爆笑が起きた。
靴を投げた少年が「おれの靴~」と言いながら頭を抱え、子どもたちはさらに爆笑していた。
そんなシーンも、なんとなく懐かしく、ちょっと嬉しい気持ちになった。

コンビニで用事を済ませて戻ってきたら、まだボールは取れていなかった。
子どもたちが変わらず石を投げる中、一人が掃除用具入れから竹ぼうきを持ってきた。
ていねいに膝を縮めたのちに跳びあがると、竹ぼうきの先がボールに触れた。ボールは右と左に一度ずつ枝の上を移動したのち、ゆっくりと落ちてきた。
子どもたちから大歓声が起こった。
私も、拍手をしたいような嬉しい気持ちになった。

子どもたちは取れたボールでさっそく投げ合いを始めた。

靴を投げた少年は、まだ木にひっかかっている自分の靴に竹ぼうきを伸ばしていた。