店主が料理を運んできたかと思うと、「ジャ~ン」と言いながら私のテーブルに置いた。

まさかの効果音付きの料理サーブに驚きつつも、私はうれしかった。
常連と認められたような気がしたからだ。
このお店にちょうど10回目の訪問だった。

お店として、10回で常連に認定するというルールはないだろう。
それでも私が何度かこの店に来ていることに気づいてくれており、そんな私との距離を詰めるべく放った効果音であったに違いない。
にも関わらず、驚いた私はごく小さく会釈をすることしかできなかった。
せっかく放ってくれた「ジャ~ン」。
うれしかったのに、あの反応では不快に思ったと思われるかもしれない。

私は次の日もそのお店を訪問した。
もし今日来なければ、昨日の「ジャ~ン」を不快に思ったせいで二度と来てくれないようになったと店主が思うかもしれないからだ。

店主が料理を運んできた。
今日は「ジャ~ン」と言うだろうか?
言っても言わなくても、口角をあげ「ありがとうございます」と言う。そう心に決めて待っていた。

店主は「ジャッ、ジャ~ン」と言いながら料理を置いた。
効果音がバージョンアップしていた。軽くパニックになった。
準備していた口角をあげての「ありがとうございます」では、バージョンアップした効果音に釣り合わないような気がした。
咄嗟に出たのが「ワァオ!」だった。
店主は驚いた様子で、小さく会釈をするだけだった。

私は明日もこのお店に来るだろう。
明日は店主が、私の「ワァオ!」への回答を用意しておく順番だ。