目を覚ますと、電車は降りるべき駅に到着していた。
慌てて立ち上がったら、膝の上にのせていたノートパソコンの入ったカバンを豪快に落としてしまった。ゴンと鳴った。
それを拾う間に扉は閉まり、電車は出発してしまった。

仕方なくもう一度席に座り、カバンの中のパソコンを取り出してみた。
幸い傷はないようだった。
起動もしてみる。
いくつかのファイルを開いて編集してみたりしたが、動作にも問題はなかった。
思いがけずうれしかったのは、すこし前から反応しにくくなっていたキーボードの「U」が反応するようになっていたことだ。
落とした衝撃によってノートパソコン内で何かが噛み合ったのかもしれない。

次の駅に着いた。
パソコンをカバンの中に仕舞い、電車を降り、反対側のホームへ走った。
すぐにやってきた反対向きの電車に乗り込んだ。
降りるべき駅で降りたら、すぐに走った。
走りながらクライアントに少し遅れると電話をした。
電話を切り、全力で走った。
約束の時間の1分前に着いた。
クライアントとの打合せの冒頭15分は全力で走ったせいでとても暑く、体はちくちくした。
しかし、キーボードの「U」はよく反応した。