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―最初に絵本制作のきっかけと現在の活動について教えてください。

2002年から活動を始めて、今年で17年目になりますね。もともと中川が大学でテキスタイルデザインを専攻していて、最初は布を使った雑貨を作って展示販売をしていたんです。僕も布雑貨に興味を持ち、一緒に2年ほど続けていた時に、お客さんから『絵本作ってみたら?』と言われて。初めて『木がずらり』という絵本を自費出版しました。それを皮切りにどんどん絵本の依頼が増えて、これまで40冊以上制作していますね。絵本が最も大きな柱ではあるけど、CDジャケットのデザインから教科書の装画、舞台芸術やアートディレクションまで、仕事はすごく幅広くて。直近では細田守監督の『未来のミライ』(2018年公開のアニメーション映画)に出てくるキャラクターデザインも手がけました」。(亀山)

国で行っているワークショップや絵本ライブもすごく楽しいですね。(中川)

本から枝葉を広げて、本当にいろんなことをやっています。(亀山)

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―インスピレーションやアイデアは、どこから得ているんですか?

に新しいアイデアを求められる仕事なので、何かしら頭を稼働させていますね。私たちは夫婦なので、オンもオフもずっと一緒だし、どこからどこまでが仕事のためのことなのかっていうのも曖昧かな。ポンと思いつく時もあれば、2人で話し合いながら無理やりに引っ張ってくる時もあります。(中川)

イデアの種はいろんなところに落ちていると思います。僕たちはできるだけ今までにないことをやっていきたいから、同じような本は作らないという姿勢を大事にしています。新しい発想とか作り方は常に考えていますね。ある程度決められた型とページ数、ストーリーや起承転結があって、そのなかで表現をしないといけない部分もある。ただ、絵本って“読み物”というイメージを持っている人も多いと思うんですけど、皆が思っているよりもっと自由で面白いはずなんです。僕らはそこを掘り下げて、絵と文章で人をアッと驚かせるようなことができないかを常に考えています。二人で本を作って遊んでいるという感覚に近いですね。(亀山)

と文で分業しているわけではなくて。それぞれの得意分野を考えながら、得意な方が多めに作業したり、アイデアを思い付いた方が主導したり、その時々で変わります。私が9割絵を描いたとしても、最後は必ず亀山が仕上げるとか。すべての作業を一人でやることはほとんどなくて、必ず二人の手が入っていますね。(中川)

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―どの作品も二人で一緒に考えながら作られているんですね。絵本の作り方や造本が変わったものが多い印象があるのですが、どんな風に制作しているんですか?

り絵が基本ですが、本によって制作の仕方は様々です。仕かけ絵本の『やさいさん』は、ページをめくるとスッポーンと野菜を引っこ抜けるようになっています。『おばけだじょ』は、影絵のように透ける色紙を背景に使って、後ろから光を当てたものを撮影して作っているんです。僕らは特殊なことをやっていると思われがちなんですが、実はかなりアナログなんですよ。どんな絵本にするかを考える時に、それぞれ画材や造本の仕方を変えています。(亀山)

くせいキャベジ動物図鑑』は、リアル感と不思議な雰囲気を出したくて。背景は描いているんですが、動物には野菜や果物を実際に撮影して印刷所でプリントしたものをカッティングして貼り付けています。この作品は2年前に日本絵本賞の大賞もいただきました。私たちが子供の頃は、手描きの図鑑も多くて。ああいう不思議な雰囲気が好きで、現実と虚構が混じりあったようなものを作りたかったんです。(中川)

が座っているようなデザインの新刊『ともだちしょうかいしようかい』は、制作中の様子を映したPVがYouTubeにあるので見てみてください(https://www.youtube.com/watch?v=S9bqKxVyYaI)。どうやって作られたかがよくわかると思います。『しつもんブック100』は、質問が100個書かれたスマホ型の絵本。目の前にいる人と、もっとつながれたらいいなと思って作りました。すごく仲良いい人とか好きな人のことでも、意外と知らないことって多い。この本を使って質問をすることで、もっとその人を理解できるんです。(亀山)

の前も打ち上げで皆でやったんですけど、意外とお酒の席でも盛り上がったりするんですよ(笑)。(中川)

っぱり作家として、造本にはこだわるべきだと思うし、こだわってなんぼだと思うんですよね。タイトル一つ取っても、デザイナーさんと一緒に試行錯誤しています。僕たちは難しい製本をオーダーすることも多々あるのですが、付き合いの長い出版社の方はそれを楽しんでくれるケースも多くて。新しいことに挑戦しようとすると、皆盛り上がってくれるんです。本来それが正しいモノ作りの形のはずなんだけど、作り手もこんなことをして大丈夫かなって弱気になってしまう人が増えている気がします。例えば『しつもんブック100』は、絶対スマホサイズが良くて。本当はもうひと回り小さくしたかったんだけど、そうすると値段が2倍になってしまう。やっぱり気軽に買える本を作りたいから、その辺りの落としどころは難しいですね。(亀山)

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―どこまでこだわるか、そのバランスって難しいところですよね。お二人にとって、絵本はどういうものなんですか?

本は子供のためのものって思われがちだけど、大人が子供に読んだり、子供が大人に読んだりもする。この出版不況のなかでも、絵本の売り上げは右肩上がりなんです。教育現場はもちろん、セラピーや介護でも使われていて。だから絵本を子供のものって決めつけずに、人と人がつながるためのツールとして考えてもらいたいですね」。(亀山)

かも声のトーンや話し方で、読み手が演出家にも役者にもなれる。絵本の世界では、読み手が主役になれるんです。(中川)

たちの絵本は、文章もシンプルだからこそ、その人自身が入り込めるんですね。読み手によっていろんな個性が生まれるのも、絵本の面白いところです。ワークショップは“子供を楽しませるためのイベント”として捉えている大人がすごく多いんです。だけど子どもには楽しむ才能があるから、心配しなくても皆すごく楽しんでくれる。僕たちはむしろ、絵の具を10年、20年触っていないような大人が楽しんでいる姿を子供に見せたいと考えていて。大人がその楽しさに気付くことが、子供が絵本を好きになるきっかけになるのだと思います」。(亀山)

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―なるほど。絵本をコミュニケ―ションツールの一つとしてお考えなのですね。最後にこれから作りたい絵本や、京都で開催する展覧会のことについて教えてください。

っぱいあるんですが、僕らも一年で3、4冊しか作れなくて。アイデアも簡単にポンポン出てくるわけではないので、なかなか形にできなくて申し訳ない思いはありますね。(亀山)

は「本と温泉」という城崎のプロジェクトがあって、それに参加しています。旅館の若旦那衆が集まって、街を盛り上げようと、城崎でしか買えない本をリリースしているんですよ。(中川)

城目学さんや湊かなえさんの作品が、すでに販売されていて。僕らもその第4弾で絵本を制作することになったんです。こういう活動に参加できるのは、すごく嬉しいですね。ちなみに11月23日(土)から京都駅の『美術館「えき」KYOTO』で始まる今回の展覧会は、大人も楽しんでもらえるようにいろいろ工夫をしています。代表作の絵本の原画を中心に、立体や映像作品を約300点展示する予定です。(亀山)

覧会で全国を回っているのですが、今回の京都はチケットのデザインも種類が多くて、それも面白いんですよ。全部制覇するのは難しいと思うんですけど(笑)。(中川)

でにいくつか巡回していて、それぞれに規模は違うんですが、その地域のお店やデザイナーさんとコラボレーションをすることもあります。今回の京都でも、友人の作家さんやお店と一緒に限定商品を作ったり、京都造形芸術大学の学生と絵本ライブをしたりいろいろと計画しています。(亀山)

たちの今までの軌跡を辿れる大規模な展覧会になっているので、京都を訪れた際はぜひ足を運んでほしいですね!」。(中川)

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『ぼくとわたしとみんなのtupera tupera 絵本の世界展』

(EVENT DATA)
会期:2019年11月23日(土・祝)〜12月25日(水)
会場:美術館「えき」KYOTO
住所:京都府京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町JR京都伊勢丹7階隣接
時間:10:00〜20:00(最終入場19:30)※変更の場合あり
休館日:会期中無休
観覧料:一般 900円(700円)
高・大学生700円(500円)
小・中学生500円(300円)
※( )内は前売り、および「障害者手帳」提示の本人と同伴者1名の料金
TEL:075-352-1111(代表)
URL:http://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/
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tupera tuperaインタビュー/読み手は最大の演出家。絵本を子供のものと決めつけず、人と人がつながるためのツールにしてほしい

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亀山達矢と中川敦子によるユニット。絵本やイラストをはじめ、工作、ワークショップ、舞台美術、空間デザイン、アニメーション、雑貨など、さまざまな分野で幅広く活動している。
http://tupera-tupera.com/smph.html