“置きにいく”デザインを心掛けています。
どこに着地点を設定するかのバランス感覚が重要なんです。

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仕事の幅が広いので、具体的に「こんな仕事をしています」と言いづらいのですが、京都の和菓子メーカーとのプロジェクトがわかりやすい一例かもしれません。

この案件はWEBサイトやパッケージのデザインから始まり商品企画にも携わっています。実際に店頭に足を運んで、お客目線になってみて必要だと感じたPOPがあれば作っています。そこから発展して良さそうな物件が空くと新店舗の提案もします。必要な人員や諸々の具体的な金額も含めて話し合っていますね。制作のプロセスに関して、商品の生産背景やスタッフの数、工場で稼働しているマシンだけでなく、売り上げの情報も共有してもらい把握するようにしています。

そうやってクライアントと密接な関係性を築いていくことで、大小の要望にマッチしたデザインが作れると思っています。私の仕事はデザインすることが重要なのではなく、最終的にクライアントの売り上げアップにつながることが絶対。自己満足のデザインにならないよう、細心の注意を払っています。

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最近、私がよく使うワードとして、“置きにいく”という言葉があります。デザイナーにとってその言葉は、“いつも通り”や“挑戦しない”といったネガティブな意味に捉えられることが多いのですが、僕は決してそうじゃないと思っているんですよ。エッジの効いたデザインなら簡単に作れてしまうけど、既存のお客様が離れてしまっては全く意味がない。特に和菓子メーカーでは、斬新なデザインに仕上げることよりも、お客様にとってのわかりやすさを追求することが大事。そういった意味で、私は“置きにいく”という言葉を使っています。

私の強みは「バランス感覚」だと思っています。“置きにいく”にしても、どこに着地点を設定するかのバランス感覚。私にとっては、どこに“置く”というのが最も重要なポイントだと思っています。そのアンサーは対話を通じてわかると思っているので、クライアントと関わる機会が少ない案件は、やりづらさを感じることもありますね。どれだけ規模や予算の大きい仕事でも、プロジェクト全体やクライアントの状況を把握できないと魅力は半減します。小規模であっても、クライアントやプロジェクトチームとの意思の疎通を経て出来た仕事の方が大きな喜びを感じられますね。

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京都で勤めた9年間。
この経験・体験が今の私のベースにあります。

大学卒業後は専門学校の先生をしたり、いくつかのデザイン事務所で働いていましたが、突然「SONYのデザインがしたい」と閃いて、当時働いていた会社を数ヶ月で辞めて上京しました。でも働き口を決めずに東京に来てしまったので、そこからリサーチをスタート。SONYのデザインを多く手がけているデザイン事務所を見つけて、ここしかないと思ってすぐさま履歴書を送りました。なかなか返事が来なかったので、直接事務所へ訪問したんですよ。そうしたらちょうど数日前にアートディレクターが産休に入ったタイミングで、運良く入社することができました。

当時は紙媒体とWEBの区分がきっちりされていなかったので、どちらもすべてひとりでやっていました。当時はヒーヒー言っていましたが、その時の経験があったからこそグラフィックとWEBデザインの基礎が学べて、今では良い経験ができたなと思っています。1年半後に帰阪しデザイン事務所に入社するも社長に嫌われて……(笑)。すぐに退社しました。その後、しばらくの間は箕面の実家でフリーとして活動していました。

そんなある日、京都の老舗デザイン事務所である[エニアックインターナショナル]の松川社長からタイミングよく連絡を頂くことに。それからはこの会社に9年間在籍することになります。こちらではデザイン制作以外のことも本当に沢山経験させてもらいました。京都のレイヤーの深い世界も見せてもらいましたね。本当にこの期間が無いと「今の自分は無い!」と言い切れるぐらい本気で仕事に向き合い、そして沢山のことを学びました。入社して2年間は既存クライアントの業務を担当。そこからはオリジナルの取り組みやイベントなど、さまざまな面白い仕事もたくさん経験できましたね。また松川さんに連れられて、上の世代の方々にお会いすることができたのも貴重な体験でした。未だに「松川くんのところのサノくん」と声をかけてもらえることもあります。

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[vol.2] グラフィックデザイナーとして大事なのはアウトプットが2割で、プロセスが8割。グラフィックデザイナーとして大事なのはアウトプットが2割で、プロセスが8割。vol.2

グラフィックデザイナー サノワタル インタビューvol.1「グラフィックデザイナーとして大事なのはアウトプットが2割で、プロセスが8割。」

サノワタルさん

京都·五条でデザイン事務所[SANOWATARU DESIGN OFFICE.INC]を運営。
グラフィックデザインに軸足を置きながら、飲食店の経営や地域をコンセプトにした“いろいろ”な活動を展開。また京都・十三界隈を飲み歩くグルマンな一面も。
http://sanowataru.com/