ギャラリーの枠を超えた活動で、一般の人たちへの発信力を高めることがミッション。
ここ数年、個人でのSNSでの発信が日常となり、今はイラストレーター・作家も個人での発信力が高まっていて、ギャラリー自体の役割を、改めて考え直さなければいけない時期に差し掛かってきていると考えています。
ondoを始めて5年経ち、その間に自分たちを取り巻く状況も変わり、ポジション・役割も変化してきています。イラストレーター・作家と話をしていると、かつての僕と同じようにクライアント、そしてエンドユーザー。いわゆる社会ともっとダイレクトに繋がっていきたいという想いも感じます。G_GRAPHICSの始まりがそうであったように、ondoの今後の方向性として、エンドユーザーや社会に届けていくという部分は、改めて向き合っていきたいと考えています。
ギャラリーでは、例えば企業やメーカーさんを巻き込み、展示を通し、作家との協働による商品作り。サロン的な役割。また、新しい才能の発掘など、間口を広げながら、より実験的なことに取り組んでいきたいと思います。
そして、今後もう一つの軸としてギャラリーを飛び出し、エンドユーザーと接点の持てる外部イベントにも力を入れていこうと考えています。その先駆けとして、春先に大阪の阪急うめだ本店にて「暮らし」をテーマにしたイベント「くらしごと市」をスタート。器・服飾・花の作家さんやメーカーさんに、フードやコーヒーの方など、モノづくりという視点をフラットに捉え、生活の中にいかに届けていくのかという部分にしっかりと向き合っていきたいです。ギャラリーやアートっていう言葉だけが先行してしまっては、現実、届かない層も大多数いて、暮らしや営みの中で、どういった良さがあって、こういう想いで向き合っているんだよということを、ギャラリー外でもできるだけ丁寧に伝える努力や、具体的な取り組みが必要だと感じています。
イベントは大阪でスタート。その後、徳島、台湾、東京を巡回予定です。毎回メンバーをセレクトしながら、開催地の方々にも参加してもらい、人と人、地方と地方をつなげながら、東京のマーケットに紹介。そこから全国へと発信していくイメージです。それを続けていくことで、様々な関係性や価値観を生み出しながら、徐々に大きな流れにしていけたらと思います。
発信が重視される東京と、モノづくりを重視する地方。
現在、ondoは大阪と東京の2拠点で展開しています。大阪を拠点に、東京へ行き来する中で体感している部分として、都市部になるほどメディアの影響が大きく、発信に重点が置かれる傾向があり、地方は発信への意識が薄い一方で、モノづくりにより重点が置かれる傾向があると感じています。
実際は、東京でモノづくりにストイックにこだわっている方も多いし、地方だからこそ戦略的に発信をしている方もたくさんいます。あくまで傾向の話ではあるのですが、出版などメディア機能が東京に集中していることもあり、特に地方でモノづくりに取り組んでいる方のほうが、社会の中で認められながら、うまく活動しづらい状況も感じています。
だから、やり方のひとつとして、両方の価値観にきちんと目を向けながら、東京と大阪を行き来することは、自分たちにとって重要なことかなと感じています。東京、地方、そして海外問わず、発信の必要性に向き合いながら、モノづくりに真摯に向き合うことを尊重することで、ondoらしいポジションを見出すことができるのではないかと考えています。くらしごと市を、地方で開催していくことにも、地方の価値観にも丁寧に目を向け、よりたくさんの出会いを生んでいきたいという意味合いもありますし、東京・清澄白河のondo STAY&EXHIBITIONでは、作家が寝泊まりできるようにし、距離や場所に捉われず、条件をできる限りフラットにし、色々な方を紹介していきたいと考えています。
今後、ondoとしては、そういった価値を作っていけるプラットフォームの役割を担っていけたらと考えています。いいものはいいという価値観を発信していくってことは、結局、一所懸命に頑張っている人たちが、正しく評価されることなんだと捉えています。それを実現させるために、しっかりと発信しながら、コツコツと流れを作っていきたいですね。

池田敦さん
G_GRAPHICS代表。クリエイティブディレクター。1978年、滋賀県生まれ。デザイン専門学校卒業後、印刷会社、デザイン会社、広告代理店を経て09年7月に、デザイン会社G_GRAPHICSを設立。主に企業・地方自治体・社会福祉法人など幅広くクライアントに持ち、ブランディング・プロモーション企画・デザインワークを手掛ける。13年に大阪・土佐堀にて、ギャラリーondoをオープン。17年には東京・清澄白河にてondo STAY&EXHIBITIONをスタート。18年より、くらしごと市を立ち上げ。大阪・東京の2拠点を行き来し、様々なクリエイティブワークや、作家・イラストレーターと社会をつないでいくプラットフォーム作りに力を入れている。